発達に凸凹がある、遅れているなど子どもの発育が心配な保護者様へ。
授業中に立ち歩く、人の言うことを理解できない、目線が合わないといった症状はわかりやすいですが、忘れ物がひどい、よく遅刻するなど一見「不注意」や「怠け」と見られがちな行動も、実は発達や気質に由来することがあります。
単なる「気をつける」では解決できず、本人の自己肯定感を傷つけ、周囲から誤解されてしまうこともあります。
障害かどうかよりも、自分なりの対処方法を知り、家庭でできる工夫を見つけることが重要です。
1、発達障害とは?
発達障害とは、脳の情報処理の仕方や発達のスピードに特徴があることで、生活や学習、人間関係などに困難が生じやすい状態を指します。
これは病気や親の育て方によるものではなく、生まれつきの脳の特性です。近年は多くの研究が進み、脳の神経伝達の仕組みや感覚の受け取り方が少し違うことがわかってきています。代表的な発達障害には次のようなものがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASDは、社会的コミュニケーションと対人関係、行動・興味に特徴がみられる発達特性です。具体的には、人の表情や言外の意図を理解するのが難しい、会話のやりとりがぎこちない、集団行動が苦手といった特徴があります。強いこだわりがあり、特定の興味に没頭したり、同じ行動を繰り返す傾向も見られます。また、音や光、においなどへの感覚過敏や、逆に痛みに鈍い感覚鈍麻もあります。知的能力は多様で、高い集中力や独自の視点を活かせることもあります。早期の理解と環境調整が重要です。
ADHD(注意欠如・多動症)
集中が続きにくい、忘れ物が多い、じっとしていられない、衝動的に行動してしまうなどの傾向が見られます。
LD(学習障害)
知的な発達に大きな遅れはないのに、読み書きや計算といった特定の学習分野だけが極端に苦手になる状態です。
発達障害は「診断名」ではなく、あくまで特性のひとつです。そして特性の現れ方は人によって大きく異なります。同じASDでも、全く違う困りごとを抱えていることもあります。また、発達障害は大人になるまで続く特性であり、「治る」というものではありません。
しかし、早い段階で気づき、環境を整えたり、支援を受けたりすることで、日常生活の困りごとは大幅に減らせます。
結果として、子どもが自分の力を発揮しやすくなり、自己肯定感を保ちやすくなります。
2、グレーゾーンとは?
「グレーゾーン」とは、発達障害の診断基準を満たしてはいないものの、日常生活や学校生活で困難や課題を感じている状態を指します。
見た目や表面的な行動は他の子と大きな差がないため、周囲から気づかれにくいことが特徴です。
例えば、こんなケースがあります。
学校では真面目に授業を受けているように見えるが、実は内容が理解できず頭が真っ白になっている
忘れ物や遅刻が多く、何度注意しても改善しない
友達と一緒に遊びたいが、ルールが覚えられずトラブルになりやすい
集団行動はできるが、終わったあとに強い疲労感が残る
このような子どもは、検査をしても「明確に障害がある」とは診断されないことも多く、支援につながらないまま過ごしてしまうことがあります。
しかし、本人にとっては日常的にストレスがかかり、自己肯定感を下げてしまう大きな要因になり得ます。
さらに厄介なのは、周囲が「普通にできるはず」と思ってしまうことです。
その結果、本人も「自分はできない人間だ」と悩み、努力しても報われない経験を重ねてしまうことがあります。
グレーゾーンだからといって放っておくのではなく、困っている本人の気持ちに寄り添い、できる工夫や環境調整を始めることがとても大切です。
支援は診断を受けた人だけのものではなく、「困っている人のためのサポート」として誰でも使える仕組みがあります。
3、本人又は保護者が課題を感じているかどうかが重要~発達の遅れを認識する・させる難しさ~
子どもの発達を「個性の範囲」と捉えるか、「遅れ」と判断するかは、とても難しい問題です。
一般的に、月齢や年齢に応じて「ここまでできていれば標準」という発達の目安はあります。しかし、その基準を少し下回ったからといって、すぐに「発達障害」や「異常」と決めつけられるものではありません。
このため、親は「うちの子は少しゆっくりしているだけ」「性格の特徴なんだ」と受け止めることが多くあります。
一方で、保育士や幼稚園教諭、学校の先生などは、日々たくさんの子どもたちと接しているため、発達の違いに気づきやすい立場にあります。さらに、障害児教育に関する研修を受けている先生も多いため、「この子はちょっと気になるな」と感じる場面があるのです。
しかし、ここに難しさがあります。
(保育園や幼稚園)先生たちは発達の専門医ではないため、「発達に遅れがあります」と断定的に伝えることはできません。けれども、日々の様子を見て「少し気になる」という思いを抱えながら、保護者にどう伝えるかを悩むことが少なくありません。一方、保護者にとっても「自分の子どもに発達の遅れがある」と受け入れるのは簡単なことではなく、強い戸惑いや不安を感じるのが自然です。
大切なのは、本人や保護者が「困っている」と感じているかどうかです。
「できないことが続いていて本人が苦しんでいる」「家庭や学校で対応に困っている」と感じたときこそ、相談のタイミングです。
気づきを拒まずに受け止めることが、子どもにとって大きな一歩につながります。
4、自分のこどもの発達に不安感を覚えたら
「なんとなく気になる」「ほかの子と比べて遅れている気がする」と思ったとき、親は迷いや不安でいっぱいになります。そんなときに知っておくと安心な流れを、具体的に解説します。筆者は専門家ではないのであくまで一般的に見ると、という視点で書いています。
1)健診で「ひっかかる」とは?
多くの自治体が1歳半健診・3歳健診を義務として行っています。この健診では、医師や保健師、心理士が発達のチェックを行います。
・1歳半健診で見ていること
「名前を呼ばれて振り向くか」「指差しをして欲しいものを伝えられるか」
「簡単な一語文(ママ、ブーブー)を話せるか」「つかまり立ち・歩行ができるか」「食事・睡眠のリズム」
・3歳健診で見ていること
「2語以上の会話が成立するか」「形や色を見分けられるか」「運動能力(片足立ち、ジャンプ)」「視力・聴力のスクリーニング」
この場面で「もう少し様子を見た方がいい」「詳しい検査をおすすめします」と言われることを、一般的に「ひっかかった」と表現しますが、これは異常があると言っているのではなく、早期に支援につなげるために、より深い検査を勧めていると捉えてください。
2)発達検診でひっかかったらどうなる?
健診で指摘があった場合、地域の保健センターなどで心理士が面談する発達相談や知能検査(WISCや新版K式など)や言語検査、療育(通所施設での個別支援や集団活動)に通うことになります。
3)受診は早いほうがよい理由と現実
苦手に対する訓練は早く始めるほど効果的と言われます。ただし、現場では人手不足が深刻で、
「相談の予約を入れても、実際に面談できるのは3か月後」
「療育施設に申し込んでも半年待ち」
といったケースは珍しくありません。
気になったら早めに相談・予約しておくことが大切です。
待っている間も、家庭でできる工夫(スケジュール表、声かけ方法)を始めると安心です。
4)検診や施設利用の費用
自治体の健診・発達相談 → 無料
公的な発達支援センターの利用 → ほぼ無料〜月数千円程度
医療機関での発達外来・心理検査 → 健康保険が使え、3割負担(乳幼児は医療費助成あり)
民間療育施設 → 児童発達支援の制度を利用すれば、ほとんどの場合で負担は月額上限(世帯収入による)
※経済的理由で利用できない家庭がないよう、国が「児童発達支援・放課後等デイサービス」を制度化しています。
5)幼稚園や保育園と並行利用する方法
多くの家庭では、保育園や幼稚園に通いながら、週に1〜2回療育施設に通う「並行利用」をしています。園と療育が連携し、子どもの特性に合わせたサポートを行うことで、家庭・園・療育の三位一体の支援が可能になります。
6)家庭でできること
気になる行動を記録する(日時・状況・頻度)
困っていることを具体的に言葉にする(例:「忘れ物が多い」ではなく「給食セットを週3回忘れる」)健診や相談時に動画など記録を見せると、判断がスムーズになります。
5、こどもの発達に関してアドバイスしてくれる専門家・専門機関とそれぞれの役割
子どもの発達について不安を感じたとき、相談できる相手や施設はたくさんあります。ここでは、主な専門家と施設を紹介し、それぞれの役割を解説します。
【専門家】
心理士(公認心理師・臨床心理士)
発達検査や知能検査(WISC、田中ビネーなど)を実施し、子どもの得意・不得意を客観的に把握、行動観察を通して、どんな環境や支援が必要かを分析、保護者への面談やカウンセリングで、子どもへの関わり方のアドバイス
保健師
保健センターで1歳半健診・3歳健診を担当、生活習慣や発達の様子を総合的に見て、必要に応じて専門機関に紹介、家庭訪問や電話相談などで、親の気持ちに寄り添いながら支援を継続
言語聴覚士(ST)
言葉の発達やコミュニケーションの困難に特化した専門職、言葉の遅れ、発音の問題、吃音(どもり)などを評価し、トレーニングを行う、親にも声かけや遊び方のアドバイスをして家庭での練習をサポート
児童相談員
児童相談所に勤務する専門職、発達や虐待、非行など、幅広い子どもの課題に対応、必要に応じて一時保護や福祉サービスにつなげる役割も担う
児童発達支援管理責任者(児発管)
児童発達支援事業所や放課後等デイサービスで、子ども一人ひとりの支援計画を作成、保護者や学校、療育スタッフと連携し、目標に沿った支援が行われるよう調整、進捗を定期的に確認し、支援内容を見直す
学校の特別支援コーディネーター
小中学校に配置されている支援の窓口役、教職員間の情報共有、個別支援計画の作成、保護者面談の調整などを行う、必要に応じてスクールカウンセラーや外部機関と連携
【施設】
児童相談所
子ども全般の相談窓口(発達、虐待、非行、障害など)発達に関するケースでは、心理判定員が検査・助言を行う必要に応じて療育機関や福祉サービスにつなぐ
発達障害者支援センター
発達障害に特化した地域の支援拠点、発達検査、相談、就学・就労支援、親向けの講座や勉強会を実施。幼児から大人まで切れ目なくサポートする
児童発達支援事業所
就学前の子ども(0〜6歳)が通える療育施設、集団活動や個別訓練を通して、社会性・生活スキルを育てる。親子通所が多く、保護者への支援や情報交換の場にもなる
放課後等デイサービス
小学生〜高校生の障害や発達に課題がある子ども向け、放課後や長期休暇に利用できる「学童+療育」のような場所、宿題のサポート、集団活動、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを実施
保健センター
地域の母子保健サービスの中心、乳幼児健診、育児相談、発達相談の受付窓口。必要なときは小
6、ハンディキャップではなく、個性や気質と理解する
発達障害や発達の凸凹は、「治すべきもの」ではありません。
大切なのは、生活に支障がある部分を減らし、子どもが生きやすい環境を整えることです。
例えば、時間にルーズになりやすい子どもには、腕時計やアラームを使って「見える」「聞こえる」形で時間を知らせる。前日のうちに持ち物をそろえる習慣を一緒につくる。といった工夫が役立ちます。
「どうしてできないの?」と責めるより、どうすればできるかを一緒に考えることが子どもの自己肯定感を守ります。
また、想像力や先を読む力が弱い子どもに対しては、
親が先回りしてすべて準備するのではなく、あえて体験を通して学ばせることも大切です。転んだ経験から学ぶことで、次はどうしたらうまくいくかを自分なりに考えられるようになります。
つまり見守りの姿勢、「失敗しても立ち上がれる環境を用意すること」が大切です。支援や工夫は、甘やかしではなく、子どもが自分の力を発揮するための合理的なサポートですこうして親子で試行錯誤を重ねることが、子どもが将来自分で問題を解決する力を育てることにつながります。
7、筆者が伝えたい、自己努力と環境構築
私は「個別適正化で部下を戦力に」という本を電子出版しています。
実は私自身も、ADHDとHSS型HSP気質を持ち、これまで悩み、苦しみながら生きてきました。
ADHDに関する本を初めて手に取ったとき、「これはまるで自分のことが書かれている!」と胸が軽くなり、救われる思いがしました。
それまでは、自分の遅刻癖や、集中しすぎて時間を忘れる特性を、ただの怠慢だと思っていたからです。
私の場合、遅刻を減らすために自己分析をしました。
「あと10分あるからこれを片付けよう」と思うと、結果的にギリギリになり、間に合わなくなる。
逆に早く着きすぎると「損をした気分になる」。
こんな自分のパターンを認め、腕時計やアラームを駆使して「行動を切り上げる合図」を作ることで、少しずつ対応できるようになりました。
40歳のとき、ゲームに熱中しすぎて子どもの就寝や食事を忘れるという大失態をしてしまったこともあります。
でも、それも含めて「これが自分だ」と受け入れ、環境や習慣を整えることで、家族や周囲との関係も穏やかになりました。
そして何よりも、自分の特性を知ることで、人に対して寛容になれました。
「自分もそういうところあるから」と思えると、他人のミスや凸凹も自然に受け止められるようになります。発達の凸凹は、デメリットばかりではありません。工夫次第で、集中力や独自の発想など、他の人にはない強みとして輝きます。
この記事を読んでくださった方には、
「自分の子どもを責めるのではなく、一緒に解決策を探してみよう」
「完璧な親でなくてもいい。環境を整えることが支援になる」
と感じてもらえたら嬉しいです。
